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中台禅寺の建築には芸術、文化、科学、布教の各機能が備わっていて、「仏法五化」という理念が十分に取り入れられているのが見られます。そして、2002年の台湾建築賞と2003 年国際明かり設計賞の取得で国内外の注目を浴びると同時に、二十一世紀の宗教建築に新しいページを開きました。

殿堂の特色

中台禅寺は遠くから見れば、清らかな心を持って山で座禅している修行者の姿にも似て、世を包容する気勢があふれています。寺院全体の建築設計は相を以って法を表し頓悟(とんご)・漸ぜんしゅう修不ふに二の大乗妙法を表現することにあります。主軸の三身仏殿から一番上の金頂までは「明(みょう)心(しん)見(けん)性(しょう)、見(けん)性(しょう)成(じょう)仏(ぶつ)」という頓とんご悟法門を象徴しています。その両側にある大、小階段及び菩薩殿は、菩薩が衆(しゅ)生(じょう)の苦しみを見るに忍びなく、その慈悲に基づいて、六度(ろくど)万(まん)行(ぎょう)という菩薩の修行を積み続けてきて初めて、円満に仏果を得ることができる漸(ぜん)修(しゅう)法門を象徴しています。

四天王殿

一階の四天王殿には、彌(み)勒(ろく)菩薩、韋(い)馱(だ)菩薩、十八羅(ら)漢(かん)が安置されています。黒い花崗岩で彫り上げた四天王は、高さ12 メートルにものぼり、殿堂の四方に鎮護しています。一つの天王は四つの天王の顔を有しており、即ち一は四、四は一、それぞれは四天王の功徳願力を持つことを表しています。言わば、仏法と建築芸術とが融合された独創像とも言えるでしょう。

大雄宝殿

二階の大雄宝殿には、仏教の教主‧ 釈(しゃ)迦(か)牟(む)尼(に)仏(ぶつ)が安置されています。お釈迦さまは大智力を持ち悪魔を降伏させることができ、威徳も無上であり、「大雄」と称されています。殿堂の色彩設計は赤や灰色を基調とし、お釈迦さまが五(ご)濁(じょく)悪(あく)世(せ)に姿を変えて化身し、普く衆しゅ生じょう済さい度どしている情景を象徴しています。両側の脇侍殿には祖師殿と伽藍殿があり、それぞれに中国の禅宗始祖‧ 達磨大師と修行道場を守る伽藍菩薩が安置されています。

大荘厳殿

五階の大荘厳殿には、円満報身‧ 盧舎那仏(るしゃなぶつ)が安置されています。天井の彩色画は敦煌の石窟図案を模倣して作りあげられました。その周囲の銅製千仏壁と共に、どこまでも尽きることのない円満荘厳な仏国世界が映し出されています。両側の脇侍殿には、東方浄瑠璃世界薬師如来と西方極楽世界阿弥陀仏が安置されています。

大光明殿

九階の大光明殿には、端厳な清しょう浄じょう法身‧ 毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)が安置されています。真っ白で潔白感あふれた仏身は人間が本来持つ清(しょう)浄(じょう)な自性(じしょう)を象徴しています。そして、光ファイバーにより天井に映し出された星空は、三千年前に仏陀が夜空に輝く星を見て法身実相を頓(とん)悟(ご)し、仏果を円証した情景が描かれています。両側の脇侍殿には、大智文殊菩薩と大行普賢菩薩が安置されています。

禅堂

禅堂は禅宗道場の最も重要視される場所で、修行僧や参学者が心の究明を行うところです。禅道場としての中台禅寺は、建築全体が禅堂を中心として設計されており、五階と九階にはそれぞれ大禅堂、上禅堂が設けられています。禅堂、及び禅堂を延長した仏殿は、禅修見(けん)性(しょう)を意味する「因」を成し遂げて初めて、法身、報身、化身の三身円満を意味する荘厳な「仏果」に到達できるということを表しています。

万仏殿

十六階は万仏殿で、殿堂の周囲には手造りの銅製薬師仏が一万尊余り嵌められています。中央に伝統的な木組みの建築法で造られた薬師七重仏塔があります。塔の中には薬師仏が七尊奉ってあり、内壁には天寧寺拓本の線刻みの五百羅漢聖像、外壁には《金剛経》の経文が刻まれています。技巧を凝らした塔には仏、法、僧の三(さん)宝(ぼう)が具わり、所々に仏教の教化を体現しています。万仏殿の両側には見学者が外からも荘厳な薬師仏塔が見られるように枠のない大きなガラス張りの構造が採用されました。そのガラスは蓮の花びらの形をしており、芸術と科学技術の融合により作り出されたもので、強風や地震の際、前後43.9 センチまでの揺れにも耐えられる設計となっています。日暮れ時、塔内から放出される明灯はあたかも浮き世にいる人々の心を本来あるべき姿に導いているかのようです。

金頂(きんちょう)

中台禅寺の頂上にある金頂(きんちょう)は、摩(ま)尼(に)宝(ほう)珠(じゅ)を意味しており、人々に本来具わっている円満な徳性を象徴しています。球形の構造はスペーストラス法によって構築され、表面は金色のチタンコーティングで覆われています。中台拈華(ねんげ)トーテムを中心とした天井は、その周囲にエッチング手法によって蓮花模様が施され、そして、ステンレスにチタンコーティングされた壁には、仏陀の六度本生譚(ろくどほんじょうたん)(ジャータカ)が刻まれており、菩薩の累劫修行の慈悲願行が表わされています。修行者が厳しい六度の修行を積んで、清しょう浄じょうな自じ性しょうを悟り、己の優れたところを限りなく役立たせるようになることが期待されているのです。

菩提文芸通り

地下一階には長さ50 メートルに達する仏陀の八相成道(はっそうじょうどう)のモザイク壁画があります。仏陀が成道になるまでの道程を生き生きと表現しています。菩提文芸通りには12 本の柱が整然と並んでいて、その柱には開山方丈惟(ゆい)覚(かく)和(お)尚(しょう)、及び当代の名家により書かれた経文が刻まれています。そして、両側には諸名家の芸術作品が陳列されており、仏法を芸術化した無上の妙味を存分に宣揚しています。心静かに鑑賞すれば、甘露のような仏陀の教えを深く感じ取ることができるだけでなく、菩提自性(じしょう)も現れてくるのです。

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  • 金頂(きんちょう)
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